Robinhood(ロビンフッド)ミレニアム世代の投資アプリ
米国の株式取引投資アプリ「ロビンフッド」が手数料無料という画期的なサービスを打ち出し、若年層を中心に利用者数が急増している。
ロビンフッドは「アメリカの金融システムを民主化したい」という願望から考案され、若い世代の投資家に手数料無料で取引できるプラットフォームを提供することでオンライン投資家を熱狂させているのだ。
若者の株式市場への参加をサポートする
ロビンフッドの創業者Vlad Tenev(ウラジミール・テネフ)は、「米国の経済格差は若者が株式投資の市場に参加しなくなったことが原因だ。」と述べている。
社会的な経済格差に立ち向かうには、フィンテック技術は有用だ。ロビンフッド以外にも、今まで投資に参加できなかったユーザーを取り込む動きは活発になっている。
たとえば、ロビンフッドと比較されることの多いAcorns(エイコーンズ)のように、クレジットカードやデビットカードで支払う金額のうち、1ドル未満のおつりの部分の差額を投資に回してくれるアプリのサービスなども、若い世代に人気だ。
いずれのサービスも、今まで資金がなく株式市場に参加できなかった層をターゲットにしたことで、一気に利用者数を伸ばしている。
コロナ禍でロビンフッドのアカウント登録が激増
パンデミックの発生後、ロビンフッドの入金済み口座が激増している。同社は「1300万アカウントに成長し、そのうち300万アカウントが2020年の最初の6ヶ月間だけで追加された」と述べた。
こうしたロンビンフッドの口座登録者の増加にともない、株式市場にも興味深い変化が現れている。
ロビンフッドユーザーの保有量が増加している銘柄は、それ以外の銘柄をアウトパフォームする傾向が見られる、との見解をJPMorganは述べている。
スコット-ギャロウェイ教授は「テスラの株が明日どうなるか知りたければ、今日ロビンフッドの口座がいくつ開設されたかを見ればわかる」と述べているほどだ。
ロビンフッドのサービスの特長
ロビンフッドのサービスの特長としては
・手数料無料
・ゲーム性のあるデザインによる中毒性
などがあげられる。サービスの詳細について順番に見ていこう。
証券取引手数料がゼロ
ロビンフッドのビズネスモデルの核になっているのが「手数料無料」サービス。ではどうやってロビンフッドは事業を黒字化しているのだろうか。
詳細は開示されていないが、ロビンフッドは売り上げの4割以上をPFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)と呼ばれる取り引きから獲得している。
PFOFとは、顧客の注文データを第三者金融機関に委託して手数料を受ける、リベートオーダー収益を得る仕組みのこと。
しかし、こうしたビジネスモデルをユーザーに対して十分に開示していなかったとして、2019年にはロビンフッドはFINRA(金融取引業規制機構)に125万ドルの罰金を支払っている。
有料アカウントによる差別化
ロビンフッドは無料アカウントだけではなく、信用取引が可能になるサブスクリプション有料アカウントでの差別化も行っている。
プレミアムアカウントであるRobinhood Goldでは、投資家は最大1,000ドルの証拠金を使用することが可能となっている。また、ゴールドアカウントでは アプリ上の現金残高を超えた信用取引も可能だ。
普通預金と当座預金の金利3%サービス
ロビンフッドは当座預金と普通預金のサービスの開始を発表すると共に、どちらの預金にも3%の金利を提供している。
なんとも太っ腹だが、利用者拡大を狙って、金融各社の金利引き上げ競争が熾烈を極めている証拠とも言える。
新規口座開設で株式がもらえる
新しい試みとして、ロビンフッドでは、既存会員の紹介リンクを通して口座開設をすると個別の銘柄1株がプレゼントされるという企画も行われている。
ロビンフッド側が任意に選んだ銘柄ではあるが、例えばマイクロソフトの株が当たった場合だと、200ドル以上をタダでもらえることになる。資金のない若者には十分なインセンティブとなっている。
仮想通貨取引にも注力
ロビンフッドでは仮想通貨も購入可能となっている。現時点で以下の7銘柄の取り扱っている。
・イーサリアム(ETH)
・イーサリアムクラシック(ETC)
・ライトコイン(LTC)
・ビットコインキャッシュ(BCH)
・ビットコインSV(BSV)
・ドージコイン(DOGE)
取り扱い銘柄は多くないものの、24時間取引可能で、トレードのパフォーマンスも期待できる仮想通貨はミレニアル世代も広く受け入れられている。
金融ニュースのサブスクリプションも好評
ロビンフッドは、昨年初めに金融ポッドキャストとニュースレターMarketSnacksを買収し、ロビンフッドスナック(Robinhood Snacks)としてリニューアルした。
ロビンフッドスナック(Robinhood Snacks)では、ニュースレターやポッドキャストで金融ニュースを無料で配信している。
現在、Snacksのニュースレターは2000万人の購読者を持ち、ポッドキャストは毎月200万人近くのリスナーを抱えているという。Spotifyの人気コンテンツのひとつにもなっている。
ロビンフッドはこうした、投資初心者への学習コンテンツの提供にも力を入れており、若者をターゲットとしたマーケティング戦略が功を奏していると言えるだろう。
ロビンフッドのファンダメンタル
ロビンフッドの企業ファンダメンタルをチェックしていこう。まずはロビンフッドのこれまでのトピックスを時系列で見てみると
・2015年 正式ローンチ
・2018年 ビットコインなどの仮想通貨取引
・2018年 金利3%の普通用金・当座預金を開始
・2019年 MarketSnacksを買収
正式ローンチは2015年なので、5年ほどで急成長を遂げていることがわかる。
最新の資金調達ラウンド(Gラウンド)で6億6000万ドル(約700億円)を新規に調達しており、総調達額は220億ドルに達し、これにより、ロビンフッドの企業評価額は117億ドル(約1兆2300億円)となっている。
ロンビンフッドの今後の見通し
では、ロビンフッドの今後の展望について見ていこう。
2021年前半にもIPOが実施される予想
資金調達総額も1兆円を超え、IPOも間近と見られているロビンフッド。早ければ2021年1Qでの上場を目指しているとのこと。
もっとも、ロビンフッドにとって株式公開の準備は目新新しいものではなくCEOのBaiju Bhatt(バイジュ・バット)は、2018年当時から最終的なIPOに向けての目標を語っていた。
ブルームバーグによると、トランプ政権の終焉が投資家の不安を和らげ、市場がゆっくりと記録的な高値に戻るのを見定め、タイミングを図っているということらしい。
好調な米国株価の上昇を受け非公開市場も活況
株式が史上最高値近くで取引され、投資家の需要が旺盛であることから、非公開市場での取引への関心は年を追うごとに高まっている。
JPモルガンは、Airbnb、SpaceX、Robinhoodなどのユニコーン企業の株式取引に特化した新しいチームを設立するとのこと。
ロビンフッドの最新の資金調達ラウンドでの好調な結果も、新規株式公開(IPO)の前兆であることは明らかと見られている。
今後の課題は若者層ユーザーのリスク管理教育
ロビンフッドのユーザーはミレニアム世代が大半なため、ハイテク企業への投資やオプション取引を好む傾向がある。
実際、ロビンフッドの取引は、ナスダックなどのハイテク企業への投資や、オプション取引が大半を占めている。
しかし、オプション取引にはかなりのリスクがあるため、投資初心者が安易に手を出すべき手法ではない。しかし、ロビンフッドユーザーにはこの危険性を熟知せず、安易にデリバティブ取引を行うケースが多いため問題となっている。
ロビンフッドを通じてオプション取引を行った20歳の投資家が73万ドル以上のマイナスを損失と勘違いして自殺したことを受け、同社はオプション取引サービスを改善する方針を示している。
今後はSnacksなどを通した、若い投資家向けの教育にも力を入れることで、上場企業としての責任を果たす役割が求められてくるだろう。