XRPだけじゃない、仮想通貨企業Ripple(リップル)の革新性
仮想通貨XRPの価格がは2020年11月に入り突如、価格が急騰している。2017年から2018年初頭にかけてのXRPの高騰(あるいはバブル)の記憶が新しいところ。
ここ数年は、XRPの価格も低迷が続いているが、米国の暗号新興企業リップル社の最近の動きと、今後の展望を見ていきたい。
XRPとビットコインは競合しない
リップルのCEOのブラッド・ガーリンハウスは、ビットコイン(BTC)を常日頃批判することで知られている。
しかし、最近のポッドキャストでは「BTCが長期的に成功することを望んでいる」と述べたのだ。
数週間前には、「バイデン政権では、エネルギーコストのかかるBTCのマイニング(PoW)は不利になる」と発言したばかりのタイミングだったため話題となった。
ブラッド自身がBTCを保有しているという実態の真偽はさておき、ここ数年の仮想通貨市場はBTCが牽引してきたことは事実。BTCは現在、2万ドル目前まで急上昇中。史上最高値が目前に迫っている。
2018以降XRPが低迷を続けるリップルとしても、金融市場でのXRPの価値を上げていくためには、仮想通貨のトレンドセッターBTCの躍進は不可欠、との認識なのだろう。
2020年11月の突然のXRP暴騰
そんな中、XRPの価格が2020年11月に入り突如価格が急騰している。
11月24日に米国の仮想通貨取引所Coinbaseで0.90ドル以上に急上昇した直後、わずか数秒で約30%下落したものの、1日で前日から2倍近くの大暴騰となった。
Coinbaseでの値動きが突出しており、大口の機関投資家の動きとみられる。S&Pやダウが史上最高値を更新し、マーケットは明らかにリスクオンとなっている。
仮想通貨でも割安感のあるリップルが買われている状況だ。
Sparkトークンのエアドロップによる影響か
また、リップルが発表したエアドロップも話題を呼んでいる。Sparkトークンと呼ばれるネイティブトークンをXRP所有者に1:1で配布すると発表したのだ。
Sparkのエアドロップは、リップル関連企業のフレアネットワークを通じて行われる。フレアネットワークはDeFiブームに追従する形で発表されrた、スマートコントラクト関連のプロダクトだ。
フレアネットワークはSparkトークンををリップルに紐づけることで、リップルのスマートコントラクト化を進めようとしている。
2020年12月12日から配布が開始ということもあり、発表のタイミングからの大幅な買い圧力が入ったものと思われる。
リップル社によるXRPの買い戻しも影響
2020年第3四半期、リップルは初めてXRPを買い戻した。今回の買い戻しでXRPを買い支えることで、XRPへの注目度を高め、価格を引き上げる狙いがあるのではないかと見られている。
リップル社は自社の事業から十分な収益を上げており、XRPを買い戻す余裕があるとの見方もあるが、低迷するXRPのテコ入れの「自社株買い」の側面が強いの事実だ。
2012年の設立以来、リップルは総額2億9,380万ドルの資金調達を受けており、資金は潤沢。今後も継続的にXRPの買い戻しを実施し「市場への流動性の供給」を進めて行くと表明している。
拡大を広げるRippleのエコシステム
リップルは仮想通貨の発行主体にとどまらず、壮大なエコシステムを模索している先進企業でもある。
最近の動きについてまとめてみた。
リップルの決算状況
リップの直近の決算状況をみてみると、ODL関連売上高は、2020年2Q:3255万ドル、から2020年3Q:8139万ドルと大幅増。
購入分を差し引いた XRP の総売上高で見ても、2020年3Q:3,255 万ドルに対し、2020年4Q:3,584万ドルと堅調に売上を伸ばしている。
また、XRPの1日の出来高は、2020年第3四半期に2020年第2四半期から増加した。1日平均の取引ボリュームは、第2四半期の1億9,628万ドルに対し、第3四半期には4億358万ドルとなった。
RippleNet(リップルネット)
国際送金ネットワークである「RippleNet」はリップルの基盤事業だ。
RippleNetは現在、銀行などの金融機関向けの決済ソリューションシステムとして、複数のプロダクトを提供している。
順番に見ていこう。
SWIFTのデメリットを解決するxCurrent
現在国際送金時におけるSWIFTでの送金は、コストと時間がかかる非効率な仕組みだ。こうしたのSWIFTのデメリットを解決するためのプロダクトがリップルのxCurrentだ。
ビットコインのブロックチェーン技術も決済のコストと処理スピードの改善する仕組みだが、処理速度とスケーラビリティに問題を抱えている。
XRPを使用したxCurrentは送金処理のスピードとスケーラビリティで、ビットコインのコンセンサスアルゴリズム(PoW)を凌駕しており、送金は3秒で完了、1秒あたり1500件のトランザクションの処理が可能と言われている。
Line of Credit(ライン・オブ・クレジット)による融資サービス
リップルは2020年にリップルネット上で、オンデマンド・リクイディティ(ODL)を利用している顧客が短期間で資金を調達できるようにするサービス、ライン・オブ・クレジットを開始した。
ライン・オブ・クレジットを利用すると、顧客はリップルからXRPをクレジットで購入することが可能となり、ビジネスの規模の拡大を加速させることができるようになる。
ライン・オブ・クレジットは、融資承認まで最短2日というスピード感。通常の融資なら2〜3日月はかかるのが一般的なので企業側には大きなメリットだ。
利率も4%程度とのことなのでかなりの好条件なのは間違いない。
リップルの分散型台帳XRP Ledger
ビットコインに使用されているコンセンサスアルゴリズムは「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」と呼ばれる。各ノードの承認プロセスで消費電力が課題となり、処理速度が遅いという問題がある。
それらの欠点を改善したものがリップルのXRP Ledgerだ。「プルーフ・オブ・コンセンサス(PoC)」とも呼ばれる仕組みで、バリデータと呼ばれるノードの8割が承認できれば取引が可能なため、消費電力少なく取引スピードが速いのが特徴だ。
Rippleの今後の見通し
リップルのビジネスモデルやエコシステムは他の暗号通貨とは一線を画しているのはまぎれもない事実。
しかし、将来性について不安要素はないのだろうか。
リップル社の企業価値とXRPの価値は相反する?
リップル社の技術を利用する金融機関は、現在およそ400社あまりにもおよび、世界の金融機関と提携を進めてきた経緯がある。
国際送金の新たなスタンダードプラットフォームを目指して躍進する同社であるが、暗号資産のXRPの話題が先行しがちな状況は否めない。
上場も視野に入ってくる状況だが、リップルが株式を公開することで、XRP価格もビットコインに迫るレベルまで高騰するのかについては、SNS上では様々な意見が交わされているが、必ずしも肯定的なものばかりではないようだ。
上場することで、リップルは新興の暗号通貨投資家ではなく、目の肥えた株式投資家に財務状況を詳細に見られることになる。
リップルの収益性やビジネスモデルが株式投資家のお気に召さなければ、XRPの価格の将来も明るくないだろうと考える人々もいるようだ。
リップルのIPOは近年中にあるのか
リップルのCEOブラッド・ガーリンハウスは、20202年1月に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で、1年以内に株式を公開する可能性があることを示唆した。
IPOの可能性のある仮想通貨関連企業としては、米国の取引所のコインベース(Coinbase)やクラーケン(Kraken)などがあげられる。
ある意味事業内容や収益性が見えやすいこれらの企業と違い、リップルのプロダクトは一般にはなかなか理解しづらいものだ。
xCurrent、xRapidといったプロダクトの売上がどの程度かは不明だが、XRPの売り上げが大半を占める現在の状況を改善し、送金ネットワークなど基幹業務でしっかりとした売上を積み重ねていく必要がある。
リップルがXRPの大半を保有していることへの批判
リップルはその収益構造上、XRPの普及と市場価値の維持と命運をともにしていると言えよう。この点はメリットともデメリットとも言える。
リップル社が保有している大量のXRPはそのほとんどがロックアップ(資金を動かせない状態)されているため、大量売却による価格の下落が想定されている訳では必ずしもない。
しかし、他の仮想通貨に比べ、発行主体が保有する割合が大きいのは事実。米証券取引委員会から有価証券扱いとされ、発行規制がかかる可能性もゼロではない。
ブラッド・ガーリングハウスCEOは「XRPが証券と判断されても事業に大きな影響はない」と見解を示してはいるが、XRP=リップルの株式と単純にみなされないためには各プロジェクトの普及・収益化は必須となってくるだろう。